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──欲望の狂宴へようこそ。

そんなある日、意識を包んでいた薄膜は唐突に破られた。
テレビに、再び映像が戻ってきたのだ。
ヴィヴィオは余りの嬉しさに飛び上がるほど喜んだ──というのは比喩。
喜ぶなどという体力は、ここに来て1週間も経たずに尽きていた。
例えどんな内容でも、自分以外の人間がいるという事実があれば、他には何もいらなかった。
『お名前は?』
『ラスタ・ソレイユ……』
『おいくつですか?』
『10歳です……』
この前の少女だ。色白で深い蒼の瞳を持つ、長いシルバーブロンドの女の子。
何かのインタビューなのだろうか、つらつらと言われるがままに自己紹介していく。
質問をしている男の姿は見えない。
『それじゃ、今までの復習してみようか』
『はい……』
少女の瞳には生気がない。鏡がないから分からないが、多分自身もまた似たようなものなのだろう。
目線はまっすぐカメラに向けつつ、少女は制服をはだけていった。
その様子に、ヴィヴィオはドキリとする。
胸を曝け出し、膨らみの双丘と小さな蕾を見せるに連れ、少女の目には光が戻ってきたのだ。
だが、その光には妖しさが灯っている。
天真爛漫なそれではない。堕天して欲望に全てを奪われた奴隷の光。
はぁ、はぁ、と犬のように浅い息をしながら、スカートの中に右手を潜り込ませる。
左手は乳首を軽く摘んで、くにくにとこねくり回している。
『ラスタちゃんは、今どこを弄っているのかな?』
『おまんこ……です、えっちな穴に指を入れて、くちゅくちゅしています』
『それだけ?』
『乳首もっ……コリコリして、凄くきもちいい……』
『ふうん? んじゃ、ラスタちゃんが今やってることは、何て言うのかな?』
一番聞きたい言葉を問いかけられて、ヴィヴィオは食い入るように画面を見つめる。
「あの時」、そう初めてこの少女が画面に現れた時に自分がやったこと。
自己の行為に、名前があるのだとすれば、どうしても聞いておきたかった。
『お、なにぃ、です』
『聞こえなかったよ、もう1回』
『オナニーです……』
「オナニー」、ヴィヴィオは少女に釣られて繰り返した。
身体の疼きが増していく。下半身が激しいむず痒さに襲われる。
永遠にも思えるほど長い時間が経っても、それはたった1秒に感じられた。
映像は着々と進んでいくが、ヴィヴィオの時間回りだけはまるで止まってしまったかのよう。
上気した顔をカメラに向けて、ひたすらオナニーに耽る少女。
快感を強く覚え始めたらしく、唇はだらしなく開いてきた。
抑え切れていない唾液が、口の端からだらりとシーツに垂れた。
『さて、いつまでもスカートの中でオナニーしてないで、カメラの前の皆さんにも見せてあげなさい?』
『はい……発情おまんこ、皆さん見て下さい』
少女は仰向けに倒れると、スカートをめくり上げた。
カメラが接写モードに切り替わり、画像がぶれる。
ヴィヴィオはこみ上げてくる不安を押さえて、画面を見つめる。
しばらく経ってカメラがピントが合うと、少女はまさにショーツを横にずらしているところだった。
透明な染みのあるショーツを退けると、少女の秘部が露になった。
モザイクなどといったものは一切かけられていない。
粘液でしとどに濡れたその場所は淫猥に過ぎて、通常のヴィヴィオならば直視できなかっただろう。
──というのはもはや過去の仮定、今のヴィヴィオは、画面の向こうに見える「現実」をどこまでも追っていた。
『ラスタちゃんは、どこを弄ると一番気持ちいいのかな?』
男の声が聞こえると、少女は秘裂の一番上にある豆粒をくりくりと触った。
すぐに『止めて』と男に言われ、少女は触るのを止める。
その代りに、秘唇を大きく広げて、カメラの前に恥ずかしい部分の全てを見せた。
『ここっ……お豆さん……クリトリスが、一番気持ちいいのっ……お願い、もっと弄らせてぇ』
『ダメだよ、ラスタちゃん。そんなにがっつかなくても、すぐいっぱい弄らせてあげるからね』
許可がなくては、少女は何もすることができないらしい。
次々と指示が飛び、少女の声はどんどん淫らに上ずっていった。
『ご苦労様。それじゃ、いっぱいクリトリスでオナニーしてもいからね』
『ありがとう、ございます』
そして少女は豆粒──クリトリスへの刺激を再開する。
豆粒には上から皮のようなものが被せられているようだったが、
少女が触っているうちにみるみる大きくなり、少しずつ剥けていった。
『それじゃ、クリトリスの皮を思い切り剥いてみようか』
『はいっ……』
両手の指で、皮を上へと引っ張る。
すると、キレイなピンク色の真珠が姿を現した。
『どう、クリ皮を剥いた気分は?』
『はい……とってもえっちで、凄く……どきどきします』
ここに到って、ヴィヴィオはもう我慢できなくなった。
少女が為すのと同じように、ショーツを脱ぐ。
秘裂に触れてみると、先日と同じように粘液で濡れていた。
しかも、触る度にどんどん溢れてくる。
「あぅっ……気持ち、いい……」
そこから先は、もう無我夢中だった。
映像の少女に合わせて、くちゅくちゅと秘裂を弄る。
男の指示に従い、少女と同じように振舞う。
どこかにまだ残っていたらしい理性が警鐘を鳴らしていたが、そんなものは怒涛の愉悦に押し流された。
得も言えぬ快感が意識の覆いを剥ぎ取り、自我を猛烈な勢いで侵食していく。
「気持ちいいよぉ……もっと、もっとぉ……」
少女が身体をビクビクと痙攣させ、その痴態をカメラがドアップにして収めていく。
粘液にまみれた秘唇が脈を打ち、クリトリスは真っ赤に熟したさくらんぼのように膨らんでいる。
『ラスタちゃんのおまんこは、今どうなってるのかな?』
『はい……愛液でぐちゃぐちゃになって、クリトリスも勃起して……凄く、凄くえっちです』
蜜壷の浅いところをかき混ぜて、粘液の立てる音を愉しむ。
まだこんなところで奏でられる音色があったのだと、ヴィヴィオは驚いていた。
「あい、えき……」
この、ぐちゅぐちゅした粘液のことか。
ヴィヴィオは指を引き上げて、その匂いを嗅ぐ。
それだけでもう、頭が沸騰して思考力が奪われていった。
『イく、イっちゃう……』
『ラスタちゃん、どこがイっちゃうのかな? ほら、皆さんに教えてあげるんだよ』
少女はクリトリスを上下に擦って、悲鳴にも近い喘ぎを上げた。
『クリ……クリトリスしごいて、イっちゃいます……』
ヴィヴィオの指もまた、少女と同じようにクリトリスを滅茶苦茶に擦っている。
粘液に絡まって、膨らんだ真珠を中々摘めない。
けれど、意識がその一点に集中し、弄り回すことだけが史上の命題となり果て、
快感を追い続けるのみの意識となった。
『イく……イくっ……ああああああああっ!』
「わた、私も……ああああっ……」
ぷしゅっ、と熱くて白濁した粘液が秘所から漏れた。
ありとあらゆる色の光が目の奥で踊って、景色が極彩色に染まる。
「あはっ……気持ち、いい……」
いつ終るとも知れない長い監禁の生活で、遂にヴィヴィオは心が折れた。

それからのヴィヴィオは、文字通り馬鹿の一つ覚え。
自慰に没頭し、食事が運ばれてきたことに気がつかないほど。
他にやることが何一つない環境に置かれて、ひたすらに快感を貪った。
制服は身体から分泌される粘液ですっかり汚れてしまっていたが、気にもならなくなった。
テレビはつかなくなったが、代りに一冊の小説を与えられた。
ヴィヴィオと同年代の少女が、男に身体を開発されていくという内容。
寝て起きるとたまに本が別のものに変わっていたが、大筋は似たり寄ったりだった。
特に、年齢はヴィヴィオに同い年の少女ばかりだった。
「調教」を受ける対象はどこにでもいる女の子から、
大富豪の令嬢、ジュニアスポーツ選手、バイオリンの名手まで様々だった。
沢山の語彙も覚えた。どの部位が何と呼ばれ、別名は何で、どこをどう弄ると快感が得られるようになるのか。
頭の中は、常に淫らな妄想で満たされるようになった。
そして、意識が桃色の幻想に染まりきったある日。
「……ん?」
突然、秘部から血が出てきた。
痛くも痒くもない、傷もないのに、タラリと流れていく一筋の血。
「ああ、私、赤ちゃんが産めるようになったんだ……」
感慨はすぐに、淫欲へと変わった。
腹の底から沸き上がってくるむずむずとした感覚は、
やがて理性の破片をもゆっくりと闇の奥深くへと沈ませていった。
「きゃぁっ……! なに、これぇ……身体が、身体が凄く熱い……
私の身体、どんどんえっちになっちゃってるよぉ……」
淫核をしごき、蜜壷を掻き回す。それ以外のことは頭にない。
「んあぁっ、ああああっ……!!」
愛液の量は、日増しに増えていった。
襲い来る愉悦は抑え難く、ヴィヴィオは流されるままに本能に従った。

だが、そんな日々はすぐに終りを告げた。
「なっ……何これ!?」
昨日の「夕食」には、睡眠薬が混入されていたようだ──今までも何度かあったことだが、
今回は今までの中で一番酷い仕打ちだった。
ヴィヴィオの下半身には、皮製の「何か」が張ってあった。
幸いにして用を足すだけの空間は空いていたが、自らを慰めるような隙間はまったくなかった。
「何か」の上から、淫核を狂ったように掻いたが、何の感触も肌には起こらなかった。
しかも、いつの間にか服は全て脱がされ、生まれたままの姿になっていた。
灯りは完全に落とされており、ヴィヴィオの世界は暗闇に閉ざされた。
それどころか、どこからともなく少女の淫らな喘ぎ声が聞こえてくる。
混乱のさなかに食事が運ばれてきたが、食欲が沸くどころか、どこにどんな食べ物があるのかも分からない。
栄養はギリギリまで押さえ込んである。一食でも抜いたら空腹で頭がおかしくなってしまいそうだというのに……
手探りで慎重に探し、もさもさと食べる。白濁した液体は一層増えていた。
食事の後、ヴィヴィオは「何か」が何なのか、焦点のハッキリしない記憶を漁って考え始めた。
もう、思考するという行為は何日ぶりなのか、何週間ぶりなのか。
数時間に渡って記憶の糸を手繰り寄せた結果、これは「貞操帯」と呼ばれていることを思い出した。
ということは、誰かが鍵を開けてくれない限り、取り外しができないということ。
「い……いやあっ!」
結論に到った瞬間、ヴィヴィオは半狂乱になって貞操帯を外そうともがいた。
ガチャガチャと音がしたが、それだけだった。
「う、うそ……」
身体の疼きはふつふつと沸いてくる。でも、どうすることもできない。
耳に入ってくる少女の嬌声はますます大きくなっているようで、
ジンジンと下腹部を苛む欲望は際限なく膨らんでいった。
「助けて……誰か、助けてーっ!」
照明は唯一の拠りどころだった。映像だって見れるし、本だって読める。
今は、それがない。
「助けて……助けてよ……」
地獄の最中に舞い降りてきた光明をも、今失ってしまった。
「嘘……こんなの、嘘だよ……」
ヴィヴィオはその場で脱力し、気絶してしまった。

何も見えない。
何も聞こえない。
何も感じない。
何も分からない。

何も考えられない。
何も動かしたくない。
何も──

ヴィヴィオは何もすることなく、常々横たわるだけの日々になった。
最初の1日か2日かは少女が淫語交じりに叫んでいたが、ある時前触れもなくぷっつりと音声は途切れた。
24時間、起きているのか寝ているのか分からなくなってしまった。
生きているのか、死んでいるのか?
自殺などという選択肢はない。そんな気力すら、霧散した。
最も原始的な欲望、食欲だけはじわじわと身体を蝕み、結局食べることになる。
意識に立ち込めた霧はついに足元さえも判断できないまでに濃くなり、
思考の対象は一瞬にしてモヤの中に消えていった。どんなに簡単な算数もできない。
全てが消え失せた世界で、ヴィヴィオはただひたすら横になり続けた。
「ママ……」

──掠れた声で叫びを上げた。何処に行けば救われるのと。
黒い天使と黒い悪魔と黒い閻羅が、いびつな笑みを浮かべながら闇の縁へと誘っている。
私は手を伸ばした。引きずり込まれると知りながら、それでも求めるしかなかった──

(続)


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